HIV・エイズのワクチン研究|病気を治療するために治療薬・ワクチン研究の最前線

2022.10.31

HIV・エイズのワクチン研究|病気を治療するために治療薬・ワクチン研究の最前線

記事監修 野口真康 医師

HIV(エイズ)は、1981年にアメリカで初めて発見された性感染症です。ここでは、HIVの現在とこれまでの歴史や、最新のワクチン研究開発状況について解説しています。「HIVにかかっているかもしれない」と悩んでいる方はもちろん、「エイズが完治可能かを知りたい人」はぜひ参考にしてください。

HIV(エイズ)は、1981年にアメリカで初めて発見された性感染症です。つまり、誕生から40年以上も経っている、歴史ある病気なのです。

HIVの発見当初は、特効薬が確立されていなかったこともあり、若くして亡くなってしまう人も少なくなかったため、「死の病」として恐れられていました。

しかし現在では、HIVに感染してしまっても、早期発見・早期治療に努めることで、HIVに感染していない人と同じように、長くそして健康的に生活できるようになりました。

HIVは、初期のうちは症状が出ないことや、症状が出たとしても一時的に解消することが多いことから、感染に気付きにくいものです。しかし、気付かないうちにHIVは、ウイルスや細菌などの病原体が体内へ侵入するのを防いでくれる免疫力を低下させます。

免疫力が低下すると、本来であれば自分の免疫力で食い止められる病気を発症することもあるため、楽観視は禁物なのです。

エイズ・HIVの現在とこれまで

HIVは世界だけでなく、日本でも多くの患者がいる病気です。

国際連合エイズ合同計画が発表した調査によると、世界のHIV感染者は3690万人で、その約半数は南アフリカ地域に集中しており、日本を含めるアジア太平洋地域では、推定510万人のHIV感染者が在住していることが推測されています。

年間の新たなHIV感染者の推計値は、170万人と減少傾向にあり、過去最高を記録した1996年に比べるとほぼ半減しています。

特に陽性者が多い東部および南部アフリカでは、新規感染者の減少が非常に顕著となっています。

日本国内における新規HIV感染者数についても、直近の令和2年は、750件と前年比で153件減少しています。しかし、決して油断のできる状況にあるわけではなく、今後も引き続き警戒と予防が必要となっています。

「令和2(2020)年エイズ発生動向年報」によると、HIVは20〜30代にピークが見られます。こうしたことから、HIVは、性的活動が活発な若い世代を中心とした病気であると考えられています。

HIVは、医療の発達により、致死の病気ではなくなったものの、ウイルスを体内から排除することはできません。

そのため、発展途上国を中心に、世界では毎年約70万人がHIVによって亡くなっており、完治への道が急務で求められているのです。

エイズ・HIVと治療研究の歴史

HIVの治療では、感染者に対し抗ウイルス薬の投与を行っていますが、HIVは一度感染してしまうと、体内から完全に排除することができません。

そのため、治療の主たる目的は発症抑制程度にとどまります。

また、感染拡大を防ぐためにも、生涯にわたっての投薬が不可欠で、このような長期服用は、薬剤耐性ウイルスの出現など、さまざまな副作用が問題となっているのです。

HIVはその発現以来、ワクチンの研究が進められています。しかし、ワクチンを作る製薬会社は、試しに開発したワクチンで、何回か実験を繰り返さなければなりません。

開発したワクチンが人体に安全なこと、そして、ワクチンがHIVの感染を防ぐことを、確かめなければならないのです。

そのため、エイズワクチンが使用できるようになるまでには、まだ少なくとも数年ほどの月日を要することが予想されています。

ワクチンの開発が困難である理由
HIVに対するワクチンは、各国の研究者がそれぞれ個別に研究を進めていますが、依然としてワクチン開発は難しいという状況にあります。理由は、HIVウイルス自体が手ごわいことにあります。
たとえば病原体に感染すると、体の中に抗体が作られます。この抗体が、体を守るための免疫となります。ところがHIV感染ではウイルスを中和する抗体が作られず、結果的にワクチンとならないのです。
こうした難易度の高さから、現在でもHIVを完治させることは不可能とされています。

最新のワクチン研究開発状況

現在は、HIV感染の広がりを予防し、対策を立てるためのさまざまな技術開発が進んでいます。

実際に、国立研究開発法人では、「医薬基盤・健康・栄養研究所」研究班による動物実験にて、体内からエイズウイルスを完全に排除できるワクチン技術を開発したことを発表しました。

この研究では、免疫反応を強める物質を出す細菌に着目し、この細菌の遺伝子を、弱毒化したエイズウイルスの遺伝子に組み込むことで、新たな生ワクチンの開発に成功しました。

これは、「HIVの完治につながる大きな一歩」といっても過言ではありません。同法人の霊長類医科学研究センターのセンター長は、「5年以内に人での臨床試験を開始したい」と話しています。

私たちの生活をより安全・安心なものにするためにも、一刻も早い治療薬の開発が待たれているのです。

エイズ・HIV患者は早期発見 早期治療が最も大事

HIVに感染してしまったら、できるだけ早期に発見・治療を開始することが重要です。

ある報告によると、HIV感染から4ヶ月以内に治療を開始した人は、それ以降に開始した人と比較して「CD4+」細胞数が正常レベルで維持できていた割合が多かったことが判明しています。

そのほかにも、感染から12ヶ月以内に治療を開始したことにより、HIVウイルスの検出不能割合が97%になったという報告も挙がっています。

このように、早期に発見・治療が開始できれば、HIVウイルス減少および「CD4+」細胞の維持によって免疫機能の維持とAIDS発症の抑制が可能となります。

反対に、HIVの感染後、しばらくたってから感染がわかるということは、早期治療の機会を逃してしまうだけでなく、自身の知らない間に感染を拡大させている可能性も否めません。心配なことがあったら、迷わずHIV検査を受けましょう。

不安になったら、まずは病院で検査を!

HIVは、主に性行為によって感染する病気です。そのため、感染者との体液や血液が交わる可能性のある接触がない限り、日常生活のなかで感染することは、ほとんどありません。

しかし、死の病気ではなくなったといっても、放っておいたら危険なことに変わりはないためHIVの感染が疑われる場合には、まずは病院で検査を受けましょう。

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野口 真康
GOETHEメンズクリニック八重洲院 院長
日本性感染症学会 会員
性感染症は、専門の医師に診察してもらうことが大切です。これからも患者さんから、『ありがとう』『助かったよ』と言ってもらえるような診療を続けていけるよう研鑽してまいります。お気軽にご相談ください。
性感染症専門医として取材紹介されました