B型、C型肝炎の感染経路について|キス、性行為、血液接触など
2022.10.28
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記事監修 宮島 賢也 医師
B型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)に感染している人は、日本国内ではおよそ100人に1人。パートナーなど身近な人が感染しているのなら、病気について正しく知っておくことが大切です。
目次
B型肝炎、C型肝炎について
肝炎とは、肝臓の細胞に炎症が起き、肝細胞が破壊されていく病気のこと。
原因はいくつかあり、日本ではほとんどがウイルス性だと言われています。
とくに多いのがB型肝炎とC型肝炎。原因となるウイルスの型や感染経路はそれぞれ違いがありますが、どちらも慢性化すると肝硬変や肝がんに進行する恐れがあります。
B型肝炎患者の推移
B型肝炎の報告数は、全体としては減少していますが、平成22年以降、若干、増加傾向にあります。
C型肝炎患者の推移
C型肝炎の報告数は、近年はほぼ横ばいの傾向にあります。
ただし、日本国内のHCV(C型肝炎ウイルス)感染者は約100万人とも言われ、感染に気付いていない、あるいは通院していない人も多くいることが予測されます。
感染経路について
B型肝炎は血液や体液、C型肝炎は血液を介して感染します。どんな感染経路があるのか、具体的に見ていきましょう。
B型肝炎の感染経路
B型肝炎はHBV(B型肝炎ウイルス)に感染することで発症する病気です。
血液のほか、精液のような体液を介して感染することから、母子感染、カミソリや歯ブラシなどの共用、性行為が主な感染経路になります。
感染の形態には、一時的な感染(一過性感染)と持続感染(キャリア)とがあり、大人になってから初感染した場合、免疫機能が発達しているので多くは一過性感染で終わります。
症状も大半の人には出ず、急性肝炎を起こすのは20~30%です。
さらにHBVは、感染者の精液や膣分泌液、唾液といった体液にも含まれていることから、性行為によっても感染します。実際、感染経路として現在最も多いのも性行為です。具体的には、コンドームなしのあらゆる行為、つまりノーマルな膣性交だけでなく、アナルセックス、オーラルセックス、またディープキスにも感染の可能性があります。とくに傷や炎症があるとリスクが高くなります。
感染の可能性がある性行為
・コンドームなしの膣性交
・コンドームなしの肛門性交
・コンドームなしのオーラルセックス
・ディープキス
ただし、唇や歯茎などから軽く出血している場合もあるため、注意は必要です。
このほか、性行為の際はコンドームを使用する、B型肝炎ワクチンを接種する等、正しい知識を持ち、適切な予防を行いましょう。
C型肝炎の感染経路
C型肝炎はHCV(C型肝炎ウイルス)に感染することで発症する病気。
血液を介して感染し、輸血や薬物使用時の注射針・注射器の共用などが感染経路になります。
B型肝炎とは異なり、血液に直接触れる以外で感染する可能性は高くないので、通常の性行為で感染することは多くありません。
またHCVにも一時的な感染(一過性感染)と持続感染(キャリア)がありますが、HCVの場合、一度感染すると約70%がキャリアになることが分かっています。
また、母親がHCVに感染していると、出産時に赤ちゃんに感染することもありますが、その確率は5~10%程度で、HBVほど高くありません。
ただし、性行為でも出血を伴う行為では、感染リスクが高くなります。たとえば生理中のセックス、粘膜が裂けて出血しやすいアナルセックスなどが該当します。また、口の中に出血がある場合も感染リスクがあるため、ディープキス等にも注意が必要です。
感染の可能性がある性行為
・生理中のセックス
・アナルセックス
・その他、出血を伴う性行為
また性行為も、出血を伴うような行為さえなければ、感染することはほとんどありません。粘膜部分が傷ついていたり、出血していたりする可能性はゼロではないので、コンドームは使用した方がよいでしょう。常識的な社会生活をしていれば、感染することはまずありません。
B型肝炎、C型肝炎の症状について
肝炎にはウイルスに感染して間もなく起こる急性肝炎と、長期間、ウイルスが肝臓にとどまって起こる慢性肝炎があります。
B型肝炎は慢性化しにくく、C型肝炎は慢性化しやすいのが特徴で、慢性肝炎を起こすと、肝硬変、肝がんへと進行する恐れがあります。
B型肝炎の症状
B型肝炎は、急性肝炎と慢性肝炎に大きく分けられます。
急性肝炎の場合、数カ月の潜伏期間後、全身のだるさや食欲不振などが現れます。
慢性肝炎は持続感染者に起こり、感染後、数年~数十年間は肝炎の症状はとくには現れません。
大人になってからの感染では、免疫機能ができあがっていることから、こうした急性肝炎を起こすのは全体の20~30%。ごく稀に劇症化して肝不全を起こすことがありますが、大半の人では、数週間で自然に治まっていきます。
そもそも急性肝炎にもならず、とくに症状が出ないまま自然に治っていくことがほとんどなので、必要以上に恐れることはありません。
急性B型肝炎の自覚症状
・全身のだるさ
・食欲不振
・吐き気、嘔吐
・褐色尿
・黄疸
C型肝炎の症状
C型肝炎の場合も、急性肝炎と慢性肝炎に分けられます。
B型肝炎と大きく異なるのが、急性肝炎を起こすのは稀であり、自覚症状がないまま60~80%の人で慢性化するという点。
肝硬変や肝がんへ進行する頻度もB型肝炎より多くなります。
ただし、急性肝炎を起こすのは稀なケースで、たいていは、感染していても自覚症状がありません。しかしながら、自覚症状がないにもかかわらず、60~80%もの人が慢性肝炎を起こすというのがC型肝炎の特徴。これが、ほとんど慢性化しないB型肝炎と大きく異なる点です。
急性C型肝炎の自覚症状
・だるさ、疲れ
・食欲不振
・吐き気、嘔吐
・褐色尿
・黄疸
さらに年率約7%の頻度で肝がんを起こす可能性があります。C型肝炎の進行はゆるやかで、次の段階へ進むのに5年~10年かかりますが、進行するほど、肝がんを発症する確率も高くなっていきます。
B型肝炎、C型肝炎の検査と検査費用について
B型肝炎、C型肝炎とも、血液検査でウイルスに感染しているかどうかを調べます。
画像検査や、肝臓の組織を採って調べる肝生検を行うこともあります。
B型肝炎の検査
血液検査でHBVの抗原(HBs抗原)の有無を調べます。この検査では、HBVが持つ特有のタンパク質(抗原)を検出することで、HBVが体内に存在するかどうかを確認します。
さらにHBe抗原とHBe抗体の検査で感染力の強さを調べます。HBs抗原もHBe抗原もHBVを構成するタンパク質ですが、前者はウイルスの外側(外殻)を、後者はウイルスの内側を構成しています。このほか、ウイルスの量やタイプ、肝機能の状態の検査、また肝臓の状態や進行状況を調べる画像検査も行います。
C型肝炎の検査
血液検査で、HCVの抗体(HCV抗体)があるかどうかを調べます。抗体とは、HCVが体内に入ったときに、身体が反応して作る物質のこと。過去、現在にかかわらず、HCVに感染したことがあるかどうかが分かります。
さらに遺伝子検査で、今現在、感染しているかどうかを調べ、陽性だとC型肝炎だと判断されます。ウイルスのタイプや肝機能の状態、炎症の程度、また肝臓の状態や肝硬変への進行状況等を調べるため、画像検査や肝生検を行うこともあります。
B型肝炎、C型肝炎の治療について
B型肝炎ではウイルスの増殖を抑えること、C型肝炎ではウイルスを駆除することが治療の目標になります。治療方法について解説します。
治療法には、肝庇護療法のほか、ウイルスが増えるのを防ぐ抗ウイルス療法、免疫療法等があります。B型肝炎は軽症でも発がんの可能性があるため定期的な検査も大切です。
2014年頃までは、体内のウイルスを排除するインターフェロンという物質を注射や点滴で増やすという治療法が主流でした。この治療法は効果に波があり、治らないことも多かったのですが、今では抗ウイルス薬の飲み薬でほとんどのケースが治るようになっています。
B型肝炎、C型肝炎についてよくある質問
感染した場合、自然に治るのか、どう予防したらいいのか、どんなことに注意して過ごせばよいのか等、B型肝炎、C型肝炎について、よくある質問にお答えします。
B型肝炎、C型肝炎は自然治癒しますか?
大人になって初めてHBV(B型肝炎ウイルス)に感染すると、大半が一過性感染になります。
この場合、肝炎を発症しなければ、70~80%は自然治癒します。
また急性肝炎を発症した場合でも90%は自然治癒します。HCV(C型肝炎ウイルス)への感染では、20~30%が自然治癒します。
このように自然治癒は十分あり得るのですが、劇症化したり、慢性化したりすると命にかかわるため、必ず病院で検査・治療を行うべきです。
B型肝炎、C型肝炎を予防するためには何をすればいいですか?
性行為の際はコンドームを使いましょう。また、他の人の血液に直接触れないこと、カミソリや歯ブラシ等、他の人の血液が付着している可能性のあるものを共用しないことが大切です。
このほか、B型肝炎はワクチンでの予防が可能です。3回接種が基本で、副反応としては、接種した部位の痛み、腫れ、接種後の発熱などがあります。
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