「HIV」と「エイズ」の違いを分かりやすく解説 | 症状の違い・感染経路について

2022.10.31

「HIV」と「エイズ」の違いを分かりやすく解説 | 症状の違い・感染経路について

記事監修 宮島 賢也 医師

医学の進歩とともに、HIV感染症は早期発見をして治療を受けることで、死に直結する病気ではなくなりつつあります。この記事では、「HIVとエイズの違い」といった基本的なことから、治療法、検査方法、検査費用について詳しく解説していきます。

厚生省(現:厚生労働省)が、日本人として初めてHIVに感染した人がいると発表した1985年から37年が経ちました。当時は、エイズパニックが起きるほど「おそろしい病」というイメージが定着していました。

しかし、医学の進歩とともに、HIV感染症は早期発見をして、しかるべき治療を受けることで、死に直結する病気ではなくなりつつあります。

多剤併用療法が始まってから、エイズで亡くなる人は大幅に減り、HIV感染症はコントロール可能な慢性疾患となりました。とはいえ、現段階では薬でHIV感染を根治できる状況には至っていないため、薬を一生涯飲み続ける必要があります。

HIVとエイズの違いとは?

HIVやエイズと耳にした時、多くの人が、「どちらも怖い病気である」と口をそろえて言うことと思います。しかし、この2つの明確な違いについて理解し、説明できる人はどの程度いるでしょうか。

エイズとはさまざまな症状を引き起こす病気の総称であり、HIVはそうした病を引き起こすウイルスの名称なのです。

つまり、HIV=エイズではないという点について、正しい知識を持っておくことが大切です。ここから先は、HIVとエイズについて詳しく説明していきます。

HIVについて

HIVは、英語ではHuman Immunodeficiency Virusと呼ばれ、この頭文字を取ったものです。「ヒト免疫不全ウイルス」と訳されており、これが日本語の正式名称です。

私たち人間は、さまざまなウイルスや病気を回避する防御力である「免疫」を持っています。免疫には、血液中にある白血球のひとつ、「リンパ球」が重要な役割を果たしています。

そのなかで司令塔とも言えるCD4リンパ球(ヘルパーTリンパ球)が、HIVに感染することで壊され、免疫力が低下していきます。

免疫機能が正常に働かなくなることで、病原体に侵されやすい身体になります。しかし、HIVにかかった人すべてがエイズを発症するとは限りません。何よりも重要なことは、HIV感染を早期発見し、適切な治療を受けることです。

HIVには2つの違った種類がある
HIVには、遺伝子学的にみると、主にHIV-1とHIV-2の2つの種類に大別されます。HIV-1は、さらにグループM(Main)、O(Outlier)、N(New)に分けられ、グループMはさらにサブタイプ(A、B、C、D、F、G、H、J、K)、サブタイプ間の組換え流行株(CRF)に細かく分類されています。
HIV-2のサブタイプは、A、B、C、D、F、Gに分類され、サブタイプごとに、流行地域が判明しています。HIV-1は、HIV-2と比較すると感染力が強く、世界的に見て最も流行しており、日本でもその多くがHIV-1です。
一方、HIV-2は西アフリカをはじめとして、アメリカやフランス、韓国、西インド地域などにおいて感染例の報告が上がっています。日本においては、これまでにHIV-2の感染者報告は外国籍の2名のみです。

エイズについて

エイズの英語表記はAcquired Immunodeficiency Syndromeで、その頭文字をとってAIDSと呼んでいます。この英語を訳した「後天性免疫不全症候群」が日本語の正式名称です。

出生時は通常ではあった免疫システムが深刻な損傷を受けることで、ざまざまな病気にかかりやすくなる状態を指します。エイズ発症とみなされる症状について、厚生労働省では23の指標を定めています。

  1. A.真菌症
    • ・カンジダ症(食道・気管・気管支・肺)
    • ・クリプトコッカス症(肺以外)
    • ・コクシジオイデス症
    • ・ヒストプラズマ症
    • ・ニューモシスチス肺炎
  2. B.原虫症
    • ・トキソプラズマ症
    • ・クリプトスポリジウム症
    • ・イソスポラ症
  3. C.細菌感染症
    • ・化膿性細菌感染症
    • ・サルモネラ菌血症
    • ・活動性結核
    • ・非結核性抗酸菌症
  4. D.ウイルス感染症
    • ・サイトメガロウイルス感染症
    • ・単純ヘルペスウイルス感染症
    • ・進行性多巣性白質脳症
  5. E.腫瘍
    • ・カポジ肉腫
    • ・原発性脳リンパ腫
    • ・非ホジキンリンパ腫
    • ・浸潤性子宮頚癌
  6. F.その他
    • ・反復性肺炎
    • ・リンパ性間質性肺炎、肺リンパ過形成
    • ・HIV脳症
    • ・HIV消耗性症候群

HIVの感染経路について

HIVの感染経路については、下記の3つが主な要因です。

性行為感染
HIV感染経路のなかでもっとも割合が多いのが性行為によるものであり、約8割と言われています。

異性間の性行為において女性は膣の粘膜から、男性は亀頭部分などから、膣分泌物もしくは精液中のHIVが侵入し感染します。男性間の性的接触では、腸管粘膜などから精液中のHIVが侵入します。
血液感染
血液感染とは、輸血時や注射針の使いまわし、誤って針を刺してしまう医療事故によるものなど、HIV感染者の血液が血管内に侵入することで感染するものです。
献血血液については、日本赤十字社が厳格なHIV血液検査を実施しているため、感染の危険性は低いです。
母子感染
母子感染は、HIV感染した母親から子どもが感染するものです。胎内感染や産道感染、母乳による感染などが挙げられます。母子感染を防ぐために有効な手段となるのが、妊娠初期にHIV検査を実施することです。

また、仮に母親のHIV感染が判明した場合も、妊娠中の抗HIV療法や陣痛前の予定帝王切開、出生時に対して母乳ではなく人工乳哺育を行うなど、適切な予防対策を行うことで母子感染を防ぐことができます。

HIV感染からエイズを発症するにいたるまで

HIV感染した際の症状の現れ方についてですが、これといった特徴的な症状はありません。急激なウイルス増殖に対する免疫反応として、発熱や頭痛、倦怠感、リンパの腫れなどの症状が見られますが、なかには無症状の人もいます。

こうした症状は、一見するとインフルエンザや風邪の症状と似ているため、HIVに感染したことに気がつかないケースが多々あります。その後、5〜10年の間に徐々に感染者の免疫力が低下していきますが、この期間も無症状で経過し、最終的には深刻な免疫不全(エイズ発症)へと陥ることになります。

急性期(感染後2週〜6週間目)

HIVに感染してから2〜6週間目を急性期と言います。急性期の症状には、発熱のほか咽頭炎、リンパ節の腫れ、皮疹、肉痛、頭痛、下痢などいずれかの症状が約50〜90%の人に見られます。

ただし、こうした症状はインフルエンザ、風邪などと似ていて、さらに数週間で症状がなくなるため見逃しやすい点に注意が必要です。また、リスクの高い性行為をした人や性感染症の既往がある人も注意が必要です。ほかに、HIV感染に気付くきっかけについては、以下が挙げられます。

  • ・下痢:32%
  • ・頭痛:32%
  • ・嘔気・嘔吐:27%
  • ・体重減少:13%
  • ・口腔内カンジダ症:12%
  • ・神経症状(無菌性脳炎・髄膜炎/神経根障害/顔面神経麻痺/ギランバレー症候群/上腕神経炎/認知障害・精神症状 ):12%
  • ・皮膚粘膜潰瘍:15%

無症候性キャリア期(感染後〜10年)

急性期の次には、無症候性キャリア期へと移行します。この時期は、無症状で経過することが多いですが、徐々に感染者の免疫力を奪っていく時期でもあります。

血液検査では、白血球数・血小板数の大幅な減少が見られる場合があります。

しかし、特徴的な症状が出ていないと、HIV検査をしない限り感染に気づくことはなく、また無症状性キャリア期の期間も人によって異なります。

15年間もの間、無症状の人もいれば、2年でエイズ発症する人もいます。

エイズ期(感染後10年以降)

無症候性キャリア期ののち、体内ではHIVウイルスが盛んに増殖を繰り返し、CD
4リンパ球を破壊していくため、免疫力が低下してさまざまな病気にかかりやすくなります。

厚生労働省が定めた、エイズ診断基準の23疾患の一つでも発病したら、エイズ期となります。このように免疫不全症状を示す状態を後天性免疫不全症候群(Acquired Immunodeficiency Syndrome、AIDS、 エイズ)と言います。

末期症状

エイズ期を経て、最終的には深刻な免疫不全に陥り、悪性腫瘍や日和見感染症などの合併症状が見られるようになります。また、エイズの末期症状として、痴呆症や亜急性脳炎などのHIV脳炎にかかりやすくなります。

治療について

HIVの治療薬剤には、主に10種類の逆転写酵素阻害薬、7種類のプロテアーゼ阻害薬などがあり、これらのうち3〜4種類の薬を組み合わせて内服する多剤併用療法が基本です。

最近では、薬の効果が非常に上がってきたことから、患者さんの状態によっては、2種類の成分が1錠のなかに含んだ合剤だけでよいケースもあります。

ただし、エイズ発症を抑えるこうした薬の作用は強いものであるため、骨粗鬆症などの副作用に注意する必要があります。

HIV感染症(エイズ)の検査方法

HIVの検査方法は、5ml程度の採血をする血液検査によって行われます。HIVに対する抗体が出来ているか否かを調べて、感染の有無を判定します。この抗体が生成されるには、HIVに感染したと考えられる日から約1ヶ月です。
そのため、1ヶ月以内に検査を受けても陰性となる場合があり、この期間はウィンドウピリオドと呼ばれています。そこで、血液検査による診断だけではなく、HIV-1のリボ核酸を増幅検出する手法が併せて利用される場合があります。検査結果が出るまでは、1〜2週間かかる場合と検査した即日に結果がわかる病院もあります。

検査費用

各自治体の保健所では、匿名かつ無料でHIV検査を行えますが、さまざまな制約があるのも事実です。検査日程が限定されており、先着順であるため検査を受けられない日があったり、検査結果の確認まで日数を要します。

また、仮に陽性であった場合は、改めて病院に行く必要があるため、治療開始にも時間がかかるのが難点です。

なお、医療機関でのHIVの検査料金は、概ね5,000~8,000円程度(自由診療)の価格帯が相場となります。当院では「来院診療」にて対応可能ですので、気になる症状がありましたらご検討ください。

来院診療の料金表

不安になったら、まずは病院で検査を!

HIVに感染したからといって即、死に直結する病気ではありません。早期発見、そして一日でも早い治療を開始することが何よりも重要です。

無症状のまま過ごしてしまい、気づいたときにはエイズ期にさしかかっていたことのないように、不安を抱えている人は、まずは早めに検査をしましょう。

宮島 賢也
GOETHEメンズクリニック八重洲院 院長
性感染症は、専門の医師に診察してもらうことが大切です。これからも患者さんから、『ありがとう』『助かったよ』と言ってもらえるような診療を続けていけるよう研鑽してまいります。お気軽にご相談ください。