淋病はすぐに治る?|完治までの期間 治療法 費用を医師が解説

2022.10.31

淋病はすぐに治る?|完治までの期間 治療法 費用を医師が解説

記事監修 岡 淳寿 医師

淋病は、若い世代での感染が増えている性病です。放っておくと重症化の恐れがありますし、耐性菌と言って薬の効かない菌に感染していると治療に時間がかかることもあります。淋菌に感染した可能性があるのなら、まずはとにかく受診しましょう。

近年、若い世代に淋病の感染が広まっています。淋病は、放っておくと重症化する恐れがあります。この記事では、淋病の治療法について解説しています。「淋病に感染したかもしれない」と不安に思っている人はぜひ参考にしてください。

淋病は自然治癒しません。早めに治療を受けましょう

淋病は、淋菌という細菌の一種が原因の性感染症。人の粘膜に寄生して生きる菌で、性行為を介して、人から人へと感染を拡げていきます。

細菌やウイルスによる感染症は、一度かかると免疫ができ、二度はかからないものも多いですが、淋菌は少し特殊。免疫が成立しにくいという特徴があり、一度感染してしまうと、淋菌が体内から自然に駆除されることはまずありません。

まれに他の病気の治療で飲んだ薬が効いて症状が和らぐことがありますが、淋菌用の薬ではないので、完全な駆除は難しいでしょう。専用の薬を使い、適切に治療して初めて淋菌の駆除が可能になります。また治療の際は、菌を駆除しきらないと再発を繰り返すので、医師の指示に従って最後まで治療しきることが大切です。

淋病の治療について

前でも少し触れましたが、淋病は、淋菌という細菌に感染して起こる病気。淋菌のせいで炎症が起こり、いろいろな症状が出ていますから、治療では淋菌を駆除していきます。

菌の駆除には、抗菌剤、いわゆる抗生物質を使います。性感染症を引き起こす細菌は淋菌のほかにもありますが、用いる抗生物質は細菌の種類ごとに異なります。

また抗生物質の投与の方法も細菌の性質に合わせて選択され、淋菌の場合は、点滴、筋肉注射、内服の3種類があります。実際には内服のみでの治療は推奨されていないため、主に点滴か筋肉注射になりますが、感染部位によって治療法が変わることはありません。淋菌性尿道炎でも、咽頭淋病でも、基本的に同じ治療を行います。

淋菌の特殊な事情として、抗生物質への耐性が強いため、適切な薬を使っているにもかかわらず効果が出ないということがあります。その場合は、抗生物質の種類を変えて、効果があるかどうか確認しながら治療を進めていくことになります。

  • 点滴による治療
    30分程度の点滴を1回行います。具体的には、セフトリアキソン(セフェム系)という抗生物質を、点滴で静脈に投与します。
    注射での投与にはいくつか方法がありますが、正確な量をはやく全身に運ぶのに最も適した方法が静脈への投与です。細菌の性質によって、抗生物質の濃度がポイントになる場合と、濃度ではなく持続時間が重要になる場合とがありますが、淋菌は前者。飲み薬で血中の濃度を上げようとすると、大量に飲まなければならないうえに、吸収されるまでに時間もかかります。
    対して、静脈への投与なら、投与した分の薬剤がすぐに血流によって全身に運ばれます。淋菌の治療で注射がメインになるのは、こういった理由からです。
  • 筋肉注射による治療
    筋肉注射を1回行います。具体的には、スペクチノマイシン(アミノグリコシド系)という抗生物質を、お尻に注射します。
    筋肉注射は静脈注射の次に吸収が早い方法です。筋肉というのは血管が多いので、抗生物質の吸収率が高く、吸収のスピードもそれなりに速くなります。お尻はとくに筋肉の量が多く、傷つけると危険な太い血管や神経も通っていないという利点があります。また、一般的に筋肉注射を肩(三角筋)に打つよりも痛みを感じにくいとされています。
    ただし、淋菌が咽頭にも感染している場合、スペクチノマイシンは咽頭には効きにくいため、前出のセフトリアキソンでの治療になります。
  • 内服薬による治療
    飲み薬で治療する場合も抗生物質が有効です。主にセフトリアキソン、スペクチノマイシンを併用することになりますが、淋菌は、既存の抗生物質が効かない耐性菌が増えているという事情から、実際は飲み薬のみでの治療は推奨されていません。
    そもそも、現在注射での投与が推奨されているセフトリアキソンとスペクチノマイシンも、もとは飲み薬として使われていました。ところが、適切に用いられなかったことから耐性菌が増えてしまい、即効性が高く間違いのない注射での投与に切り替えられたという経緯があるのです。ただし、アレルギー等体質的な問題があれば、ほかの抗生物質も含め、飲み薬が選択される場合もあります。
    このほか、淋病はクラミジア感染を合併していることが多く、クラミジアの治療のために飲み薬を併用することがあります。それぞれの目的を理解して、医師の指示に従って正しく治療を続けることが大切です。
薬の効かないスーパー淋菌について
通常有効とされている抗生物質が効かない淋菌を「スーパー淋菌」と言います。
まず、スーパー淋菌に限らず、自然界には抗生物質が効かない耐性菌がもともと存在しています。ただ、他にも細菌がたくさんいることで互いに牽制し合い、耐性菌だけがいきなり増えるということはありません。
ところが何らかの理由で耐性菌以外の細菌が一斉に死滅し、耐性菌だけが生き残ってしまうと、他の細菌からの牽制が効かないために、耐性菌が一気に増殖するということが起こり得ます。淋菌で言うと、治療中、薬を飲むのを途中でやめる、薬の回数を減らすといった中途半端なことをしてしまうと、耐性菌を増やす恐れがあります。
また、抗生物質を浴びることで、淋菌が変異することもあります。細菌も他の生物と同様で、生き延びるために置かれた環境にあわせて自身の性質を変化させていきますが、とくにその変異のスピードが速いのが淋菌。抗生物質の開発と耐性菌の進化はいたちごっこのようです。
こうした耐性菌が増えて感染が拡がっていくと、使える抗生物質も限られてしまい治療が難しくなっていきます。

淋病が治らないことがある? 治療後に検査を受けることが大事

淋病の治療は、注射を打って終了ではありません。完治したかどうかを、治療後に確認検査を行って確かめることが大切です。一回の治療で完治することが大半ではありますが、抗生物質が効かない耐性菌に感染していると、体内に淋菌が残っている可能性があるからです。また、症状が消えて治ったように見えても、淋菌が完全に駆除されていない場合もあります。

淋菌が体内に残っていれば、そのうちに増殖して再発する確率が高くなりますし、他人にうつす可能性も出てきます。こうしたことを防ぐために、淋菌が体内から完全に駆除されているかどうかは、「痛みがひいてきたから大丈夫だろう」などと自己判断せずに、必ず検査で確認するようにしましょう。なお正確な結果を得るために、確認検査は治療後4週間ほど期間をあけてから行います。

治療はパートナーと一緒に受ける

淋病は1回の性行為で感染する確率は約30%。自分が淋菌に感染していれば、パートナーも高確率で感染していると考えられます。その場合、自身が治療して治しても、治療後の性行為で再感染してしまいます。

パートナー間でうつし、うつされを繰り返すことをピンポン感染と言いますが、淋病は一度感染しても免疫は獲得できないため、ピンポン感染を起こします。完治には、パートナーにも同時に治療を受けてもらい、共に完治させることが重要です。

淋病を放置したらどうなる?

人によっては症状が軽かったり、まったく症状がなかったりする淋病。感染者も多く、誰がかかってもおかしくないからと油断して放置してしまうと、淋菌の感染が体内深くに拡がって重症化するリスクがあります。

男性は、尿道炎の時点で治療しないと、精巣上体炎を起こす可能性があります。精巣上体とは副睾丸のことで精巣の後ろ側にある部位ですが、ここが炎症を起こして腫れあがり、歩くことができないほどの痛みを伴うことがあります。悪化すると無精子症になることもあります。

女性では、子宮内膜炎や卵管炎、腹膜炎、肝周囲炎を起こす危険性が。放置すると不妊症に、また感染したまま出産することで赤ちゃんが産道感染する恐れもあります。

治療に関するよくある質問

注射やお薬といった治療内容、治療中に性行為をしてもよいか等、当院によく寄せられる質問についてお答えします。

注射は痛いですか?どこに打ちますか?
筋肉注射はお尻に打ちます。多少痛みはありますが、一瞬で終わります。一般的に、筋肉注射というと上腕に打つこともありますが、上腕よりもお尻の方が痛みを感じにくいという声もよく聞かれます。また、点滴の場合はお尻ではなく、腕になります。
市販薬はドラッグストアに売っていますか?
淋病の治療薬は、医師の処方が必要な薬のため、市販薬はありません。つまり、ドラッグストアでは買えません。海外サイトから個人輸入することはできますが、適切な薬剤でないとかえって治りにくくなりますし、量を間違えば副作用の危険性も高くなります。
治療中は性行為をしない方がいいですか?
淋菌は、性行為1回あたり約30%の確率で感染します。治療中であるということは、淋菌は体内から駆除されていない状態ですから、人にうつす可能性は十分にあります。治療を完了し、確認検査で陰性だと分かるまでは、性行為は控えましょう。

淋病かも思ったら 放置せずきちんと検査と治療をしましょう。

淋病は感染者が多く、それだけ誰もがかかりやすい性感染症だと言えます。症状がひどく痛みが激しければ治療に行く人が大半でしょうが、症状が軽いと、「よくある病気みたいだから大丈夫だろう」とそのままにしたくなるかもしれません。また、「とりあえず様子を見てみよう」と放置しているうちに症状が和らいでくることがあり、自然治癒を期待することもあるかもしれません。

しかし残念ながら、淋病は治療せずに治ることはほぼありません。適切な抗生物質を使って治療を行わない限り、病原体である淋菌を体内から駆除することは難しいのです。また適切な治療を受けたとしても、淋菌は抗生物質への耐性化が進んでいるため、菌の駆除に時間がかかることが多々あります。

尿道炎のような初期段階で手を打たなかったばかりに感染が拡がり、重症化して病院へ行ったはいいが、耐性菌に感染していて抗生物質が効かずに症状に苦しむ、ということも十分に起こり得るのです。

岡 淳寿
GOETHEメンズクリニック八重洲院 院長
性感染症は、専門の医師に診察してもらうことが大切です。これからも患者さんから、『ありがとう』『助かったよ』と言ってもらえるような診療を続けていけるよう研鑽してまいります。お気軽にご相談ください。