梅毒とは?初期~末期症状・感染経路について|検査と治療方法を解説

2022.10.28

梅毒とは?初期~末期症状・感染経路について|検査と治療方法を解説

記事監修 宮島 賢也 医師

ふと見たら、ニキビのような発疹ができていた。足の付け根のリンパを押すと少し痛い。何だろうと思いネットで調べてみると、梅毒の症状が出てくる。まさか自分が?信じたくないけれど、とても不安…。梅毒という病名は知っていても、自分が感染したかもしれないと思うとショックがかなり大きいと思います。

梅毒は、昔は確かに死に至る病気でした。でも現代では、早期に手を打てば完治する病気になっています。怖がっているだけでは解決しません。またもたもたしているうちに、症状が消えていき安心するかもしれませんが、それがまさに梅毒の特徴でこの病気の落とし穴。具体的な症状や進行の仕方、治療法などを解説していきますので、梅毒について理解したら、早めの対処をおすすめします。

梅毒とは?

梅毒は、粘膜や皮膚にできた小さな傷から病原体が侵入して発症する性感染症。
病原体は梅毒トレポネーマという細菌の一種で、その中でも一般の細菌とは異なる特徴を持ったスピロヘータというグループに属した菌です。

梅毒の症状は、現れたり消えたりを繰り返しながら、4期にわたって進行するのが特徴的。
初期にあたる第1期には、ニキビのようなしこりが陰部にできたり、リンパ節が腫れたりといった症状が現れ、一定期間が経過すると自然に消えていきます。

治療法のなかった昔は不治の病で、鼻の骨が欠損することが多かったことから「梅毒になると鼻が落ちる」と言われました。
治療法が確立した現代において、日本ではほぼなくなった病気でしたが、2010年頃から東京を中心に感染が急増しています。

早期に治療を始めれば治る病気ですが、放置して第3期、第4期と進行してしまうと死に至ることもあるため侮れません。

梅毒患者数は男女とも増加傾向にある

梅毒の感染者の傾向を見ると、男女とも10年ほど前から急増。罹患の多い世代は、男性では20代~40代、女性では20代という分布になっています。

感染者数が過去最多を記録したのは2018年で6,923人。翌2019年は6,577人と高止まりしていましたが、2020年のコロナ禍で3,407人と半減しました。
コロナ禍までは感染者が多かったことを考えると、女性は風俗で働いている人、男性はそのお客という感染者の傾向が推測されます。


都道府県別では、東京が25%と突出。日本の人口の11%が集まる首都とはいえ比率としては多過ぎで、それだけ感染しやすいと考えて間違いないでしょう。

日本ではほぼなくなっていた梅毒が2010年頃から出始めたのは、海外渡航者で日本の風俗を利用する人が増え、そこから持ち込まれたことが一因になっているようです。
抗生物質の効かない薬剤耐性菌も検出されるようになっており、これまで以上に予防と速やかな治療の重要になっています。

梅毒の原因|主な感染経路について

病原体の梅毒トレポネーマは、血液や精液、膣分泌液、傷口からの浸出液といった体液に多く含まれています。こうした体液が、梅毒ではない人の粘膜や傷口などと直接接触して菌が入り込み、感染が拡がっていきます。

性行為による感染
感染経路で最も多いのは、感染者の粘膜と直接接触する性行為です。コンドームなしのノーマルなセックス、オーラルセックス(フェラチオ、クンニ)、アナルセックス、素股など、あらゆる性的接触に感染の危険性があります。 また梅毒は、コンドームでは覆えない部分の皮膚に感染することがあり、その場合は例えコンドームをしていたとしても感染の危険性があります。1回の性的接触で感染する確率は20~30%。傷口からも感染しますから、キスも感染経路になります。
妊婦さんから赤ちゃんへの感染
妊娠中に梅毒に感染していると、赤ちゃんに感染することがあります。これを母子感染と言い、感染確率は60~80%。胎内にいる赤ちゃんに胎盤を通して感染すると、早産や死産、新生児死亡、また奇形児になる可能性もあります。 さらに生後3カ月以内には手のひらや足の裏の発疹、リンパ節の腫れ、黄疸などの症状、また生後2歳以降から学童期にかけて角膜実質炎、感音性難聴、ハッチンソン切歯を発症することも。20代女性の感染が増えていることで、赤ちゃんへの感染も増加傾向にあります。
銭湯、トイレ、タオルの使いまわしでうつる?
感染者の体液との直接接触でうつる病気のため、銭湯やトイレ、タオルの使い回しで感染する可能性は低くなります。とはいえ、気を付けた方がよいのは確かで、例えば銭湯で肛門周辺に症状が出ている人が風呂のイスを使っていたとしましょう。直後にそのイスにそのまま座って肛門などの粘膜が接触すると、感染の可能性はゼロではありません。ただ、イスは使用前に洗い流せば感染確率は低くなりますし、お湯に浸かれば限りなくゼロに近くなります。

梅毒の主な症状について|初期~末期症状

梅毒は進行性の病気。「3週間後」「3ヵ月後」「3年後」「10年後」の4期にわたり、口内炎やかゆみ、手のひらの発疹などの症状が出たり消えたりを繰り返しながら、身体を蝕んでいきます。

初期症状(第1期)
初期症状が現れるのは、感染して3週間経ったころ。初期の症状としては主に3つあります。 1つは陰部や口の中にできる初期硬結(しょきこうけつ)。小豆大から小指大のしこりで、軟骨のような硬さで中心部が硬く盛り上がり、痛みのある場合とない場合があります。 2つめに硬性下疳(こうせいげかん)。陰部や口の中にできることが多い浅い潰瘍です。 3つめとしてリンパ節の腫れ。感染部位周辺の足の付け根や首周辺のリンパ節が硬く腫れます。治療しなくても、2週間~3週間で自然に消えていきます。
男性の出現部位
初期硬結と硬性下疳は、亀頭や陰茎、亀頭と陰茎の間のいわゆるカリ首の部分、性器周辺の皮膚などに症状が現れます。口の中や喉の粘膜に発症することもあります。このほか、足の付け根や首のリンパ節の腫れも見られます。
女性の出現部位
初期硬結と硬性下疳は主に膣の中、大陰唇(ビラビラの外側の部分)や小陰唇(ビラビラの部分)周辺の皮膚に発症します。男性と同じく、口の中や喉の粘膜に症状が現れることもあります。また、足の付け根や首のリンパ節が硬く腫れることがあります。
第2期
感染から約3ヵ月後になると第2期に進行します。 第2期では、症状が全身に広がり始めます。背中や腕、脚、腹部、手のひらや足裏などに小豆大の盛り上がりができる丘疹性梅毒、手のひらや足裏にフケのようなものがついた発疹ができる梅毒性乾癬、全身にバラの花のような赤い湿疹ができる梅毒性バラ疹、性器や肛門周辺に扁平状のイボができる扁平コンジローマ、また、膿を含んだイボや皮膚の白斑、爪の異常、口や喉の粘膜の炎症、毛髪や眉毛の脱毛が起こることもあります。 いずれも3ヵ月~3年ほど続いた後、また無症状の時期が訪れます。
第3期
感染後、3年以上経過すると、第3期に進行します。第3期に見られる症状は、ゴム腫や結節性梅毒疹です。ゴム腫は、皮膚から筋肉や骨へと組織を破壊しながら進んでいくしこりで、「鼻が落ちる」と言われてきたのは、特に鼻の骨が破壊されやすいから。また結節性梅毒疹はしこりの表面が崩れて潰瘍になったものです。これらの症状が全身至るところに現れますが、現代の日本でこの段階まで進行することはほとんどありません。
末期症状(第4期)
感染から10年以上経過すると、第4期、末期の状態になります。第4期まで進行すると、梅毒トレポネーマが中枢神経にまで侵入して臓器が壊死したり、大動脈炎や大動脈瘤といった心血管系への影響、また脳や脊髄が侵されることによる麻痺や神経障害も起こり、最終的には死に至ります。 ただ、現代の日本では第1期、第2期の段階で発見・治療されることがほとんどで、第4期まで放置されることはまずありません。

梅毒の潜伏期間について

梅毒は潜伏期間にも特徴があり、感染後、初期症状が現れるまでのいわゆる潜伏期間だけでなく、各期の合間にも無症状になる期間があります。

梅毒トレポネーマに感染して、初期症状である第1期の症状が出るまでの潜伏期間は、3~6週間。
しばらくすると第1期の症状が消え、4~10週間の潜伏期間後、第2期の症状が現れます。

第2期の症状も一定期間後に消え、無症状の期間が始まります。感染して1年以内に起こるこの状態を早期潜伏梅毒と言います。

これに対して、感染後1年以上経つ無症状の状態を後期潜伏梅毒と言い、数年~数10年という長い潜伏期間になります。
この時期まで何の治療もせずに来てしまうと、約1/3に梅毒晩期の症状が起こることになります。

梅毒の検査時期・検査方法と検査費用

  • 検査時期
    梅毒の検査は、感染した可能性が考えられる行為をしてから1ヶ月以上が経過していれば、正確な検査結果が得られます。病院で検査する場合は、男性は性病科、泌尿器科、女性は婦人科へ。また皮膚科での検査も可能です。「まだ病院は…」という場合は検査キットで調べることもできます。
  • 病院での検査方法
    血液検査で抗体の有無を調べます。体内に侵入してきた梅毒トレポネーマを排除するために身体が作り出すものが抗体ですが、梅毒の特性上、第1期の最初の数週間は検査をしても正確な結果が出ないことがあります。感染後1ヶ月以上経過してからでないと検査ができないというのはそのため。 採血自体は健康診断とは異なり、採取する量はほんの少し。結果は15分~20分後に分かり、陽性(抗体がある)の場合はさらに精密検査をすることになります。
  • 検査キット
    検査キットの場合は、取り寄せたキットを使って自分で血液を採取します。ランセットという採血器具で指先から採血し、痛みは少しチクッとするくらい。郵送して検査をしてもらいます。病院や保健所へ行く時間がないとき、匿名で検査したいときに便利です。

梅毒の治療について

  • 治療法
    梅毒の治療は主に飲み薬で行います。お薬で副作用が出たことがある人や、アレルギー症状を起こしやすい人は、その旨を医師に必ず伝えましょう。また処方薬になるため、検査キットで検査した場合は、病院を受診しなければ治療を始めることができません。
  • 治療薬について
    治療には、ペニシリン系の抗生物質を使います。副作用として、下痢や吐き気、食欲不振などの消化器の症状が出ることがあります。ペニシリンにアレルギーがある場合、テトラサイクリン系かマクロライド系の抗生物質を使います。菌の減少が思わしくないときは抗生物質を切り替えながら治療を進めますが、放置している期間が長いと投薬期間が長引く恐れがあります。また体質によっては後遺症が残ることもあるので、検査は早めに受けましょう。
  • 治療期間
    期によって治療期間が異なります。第1期は2~4週間、第2期は4~8週間、第3期以降まで進行すると、8~12週間前後の内服治療を行います。治療の内容は、1日3回の服薬を期間内続けるだけなので、負担はそこまで大きくはありません。 梅毒は症状が出たり、消えたりを繰り返しますが、治療を開始して症状が治まったからといって途中で薬を飲むのをやめてしまうと、水面下でさらに悪化する可能性があります。処方された抗生物質は、医師の指導のもと、最後まできちんと飲み切ることが重要です。

梅毒についてよくある質問

梅毒は症状が現れても自然に消えていくため、自然治癒するのではないかと考える人も多いようです。
自然治癒について、治療中のセックスについてなど、よくある質問にお答えします。

梅毒は自然治癒しますか?

結論から言うと、自然治癒しません。
梅毒は、治療をしなかったとしても一定期間が過ぎれば症状は自然に消えていきます。
しかし、これは梅毒という病気の特徴であって、病原体の梅毒トレポネーマが体内から排除できたということではありません。
潜伏しているだけなので、しばらく経った後、さらに進行した症状が現れるようになります

早期に適切な治療を受けておかないと、数年後、複数の臓器障害に陥ることもあります。早めに病院で受診してください。

 

梅毒の治療中に性行為をしても大丈夫ですか?

梅毒の治療中でも感染の可能性があります。
とくに第1期、第2期は感染力が非常に強い時期。
ノーマルな性器性交はもちろん、オーラルセックス、アナルセックス、その他性行為に類似する行為も含め、医師が安全と判断するまでは控えてください。  

梅毒を予防するためには何をすればいいですか?

予防のポイントは、感染部位と粘膜や皮膚が直接接触しないようにすること。
性器性交はもちろん、フェラチオや素股のときもコンドームを使いましょう。

ただ、コンドームでは覆えない部分の皮膚でも感染が起こる得ること、またキスでも感染することから、100%の予防は現実的には困難です。
感染が疑われる場合はすぐに検査、治療を受けましょう

宮島 賢也
GOETHEメンズクリニック八重洲院 院長
性感染症は、専門の医師に診察してもらうことが大切です。これからも患者さんから、『ありがとう』『助かったよ』と言ってもらえるような診療を続けていけるよう研鑽してまいります。お気軽にご相談ください。