梅毒の検査について|男女別 症状別の検査・治療方法を紹介

2022.10.31

梅毒の検査について|男女別 症状別の検査・治療方法を紹介

記事監修 宮島 賢也 医師

新型コロナウイルスの陰に隠れるようにして梅毒が若年層を中心に感染拡大を起こしていることをご存じでしょうか?ここでは、「梅毒の検査方法を知りたい」「梅毒にかかってしまった場合、どのように治療を進めれば良いの?」とお困りの方に向けて、最新の梅毒の検査・治療方法を解説します。

国内の梅毒感染者数は、ここ50年間で最も増加しています。梅毒は放置していると、最悪の場合死に至る可能性も否定できない、大変恐ろしい病気です。また、母子感染のリスクも決して低いとは言えないため、妊娠を検討している人も注意が必要な病気です。

しかし梅毒は、早期の薬物治療により、完治させることが難しくありません。特に昨今は、医療が発達したこともあり、梅毒が重症化した症例は、そう多く報告されていないのが現状です。

早期に適切な検査と治療を受けることで、問題なく治癒しますのでご安心ください。

本記事では、「梅毒の検査方法を知りたい」という人や、「梅毒にかかってしまった場合、どのように治療を進めれば良いの?」とお困りの方に向けて、最新の梅毒の検査・治療方法を網羅的に解説します。

梅毒の検査について

梅毒は進行性の病気です。感染すると全身にさまざまな症状を引き起こし、悪化すると命の危険すら否定できなくなってきます。

実際に、有効な抗生剤として知られるペニシリンが発見されるに至るまでは非常に感染力も強く、一度感染したらほとんど死に至るような、とても恐ろしい性感染症として知られてきました。

しかし、現在では早期の発見・薬物治療により、大きな問題を残すことなく完治させることができます。ただし、検査はもとより治療が遅れた場合や、治療を受けずに長年放置したりすると、日常生活が送れない程の支障をきたす場合もあります。

そのため、梅毒を治すためには、早めに検査を受け、治療に取り掛かることが何よりも重要になります。決してひとごとだと軽く受け流してしまわないように、注意してください。

梅毒の検査はどんなことをする?

梅毒に感染しているかどうかを検査する方法には、「病変部位から直接、菌を検出する方法」と「採血を用いて行う血清学的検査をする方法」の2種類が存在します。実際の検査は血清学的に診断を下すことが多いといえます。

梅毒の検査は、感染機会から6週間以上経過していれば、検査可能です。そのため、性交渉後に不安になった場合は、6週間程度、時間を置いてから受診するようにしましょう。

なお、梅毒の血液検査には「TP法」「RPR法」の2つがあります。以下では、それぞれの検査方法の特徴や違いについて説明します。

  • 「TP法(TP抗体検査)」による検査
    「TP法(TP抗体検査)」は、主に、梅毒の即日検査で用いられています。しかし、TP法(TP抗体検査)は、感染機会からある程度日数がたっていなければ、血液検査で陰性と判断されることがあり、感染したことが分からない時期が存在します。これを「ウインドウピリオド」といいます。
    反対に、感染機会から数えて、延べ2ヶ月以上が経過している場合には、検査が受けられます。
  • 「RPR法(RPR抗体定量検査)」による検査
    「RPR法(RPR抗体定量検査)」は、梅毒の精密検査でよく用いられる検査方法です。「RPR法(RPR抗体定量検査)もTP法(TP抗体検査)と同じく、感染機会からある程度の時間がたっていなければ、血液検査では陰性となることがあり、感染したことが不明な時期「ウインドウピリオド」があります。

    また、RPR法(RPR抗体定量検査)は陰性・陽性という結果だけでなく、数値による結果も重要で、数値も併せて感染の判断を下します。
    そのため、感染機会から検査までの経過日数があまりにも短すぎると、結果の数値自体は陰性の値を示していたとしても、実際には感染初期の状態であり、後から数値が上昇するケースも見られます。

    このような理由から、RPR法(RPR抗体定量検査)を用いた検査であっても、感染をしたと思われる時から4週間以上経過した後に検査を受けるのがおすすめです。
    また、梅毒の既往歴がある人は、RPR抗体の数値次第では、検査後1ヶ月ほど経過してから再度RPR法(RPR抗体定量検査)を実施し、数値の変化を確認する必要があります。
【注意】梅毒は再発しやすい病気です!
梅毒は、完治したとしても体内に免疫を保有することができないため、再び感染者と性行為を行うと再感染する可能性があります。

一度梅毒に感染することで、血中に梅毒トレポネーマの抗体と呼ばれるものができることはあるのですが、その効力は再感染を防いでくれるほどではありません。

そのため、梅毒が完治したからと安心しすぎず、再感染しないよう、予防に努める必要があるのです。

完治しているか「治癒確認」が大切です

完治が難しい梅毒は、再発していないか治癒確認を行うことも重要です。そのため、検査で陽性と診断された場合は、薬のよる治療後、1〜2ヶ月経過してから再度採血検査を行います。

ただし、この時点では、まだ完全に治癒したかどうかを正確に判断できない可能性があります。なぜなら、梅毒の治癒判定は、その他の性感染症に比べ少し特殊で、定期的に採血検査を実施し、RPRの数値の減少具合から最終判断するためです。

そのため、薬の内服後、半年間は医師のフォローのもと再発が無いかを確認していきます。

治療中に再感染してしまうと今までの治療の意味がなくなるため、少なくともも半年間は、性行為を控え、治療に専念した方が良いでしょう。

なお、数値の減少具合には個人差があることを覚えておいてください。

梅毒の検査はどこで受けられる?(保健所・病院・検査キット)

梅毒の検査は「保健所」もしくは「病院」で受けることができます。また、検査費用については、保険が適用される場合と、適用されない場合があります。

診察時に何か症状が発生していたり、事前に自身で検査キットによる検査を行って、結果が陽性だったりした場合には、治療費が保険適用の対象となります。

反対に、検査をして陰性だった場合は保険適用外となります。この場合、検査の費用が全額、自己負担扱いとなります。

保健所で性病検査を受ける

基本、無料で検査を受けられるのが保健所の性病検査です。各地方自治体によって実施され、匿名で検査を受けることもできます。

このため梅毒に感染する可能性のある行為を行った経験がある人や、自覚症状が無い人におすすめです。

ただし通常、保健所では4種類の性病検査のみが行われます。「梅毒」と「クラジミア」「淋菌」そして「HIV」です。

さらに精密な検査を受けたい人は、保健所よりも病院のほうが適しているいえます。

保健所で検査を受けるメリット

  • ・検査費用がかからない
  • ・匿名で検査を受けられる

保健所で検査を受けるデメリット

  • ・検査の種類が少ない
  • ・決まった日にしか検査ができない
  • ・治療は別の医療機関となる

病院・クリニック(泌尿器科、性病科、婦人科)で検査を受ける

梅毒の検査は、病院や専門クリニックでも受けることが可能です。病院・クリニックでは、保健所と違い、さまざまな性病の検査が可能なため、入念にチェックしておきたい人におすすめです。

また、治療環境が整っているため、早期に治療を開始できる点も病院・クリニックならではの強みです。

病院・クリニックで検査を受けるメリット

  • ・あらゆる性病の検査を受けられる
  • ・すぐに治療を開始できる
  • ・好きな日時に受診可能

病院・クリニックで検査を受けるデメリット

  • ・費用がかかる
  • ・匿名で受けられないところもある

検査費用について

梅毒の検査料金は、概ね4,000~7,000円程度(自由診療)の価格帯が相場となります。

当院では「来院診療」にて対応可能ですので、気になる症状がありましたらご検討ください。

来院診療の料金表

梅毒の治療について

梅毒検査で陽性と診断が下された場合、ペニシリン系の抗菌薬を用いながら治療が行われます。

梅毒は、不治の病と呼ばれた過去や重症化した際の病状の重さから、難病のように思われがちですが、適切な抗菌薬を用いた処置さえ行われれば、比較的簡単に治療できる性病です。

ただし、梅毒は治療をしなくとも、病状が一時的に治ったように見えるという落とし穴をもっています。

病状が一時的に肉眼で確認できなくなったとしても、それは完治したわけではありません。

体内では梅毒トレポネーマを有している状態なので、水面下で着実に悪化していきます。治療開始後、症状が収まったからといって途中で服薬を中断してしまうと、症状が改善しないまま再発してしまうこともあります。

そのため、梅毒の治療には主治医の指示に従って、処方された薬を飲み切ることが欠かせないのです。

完治するまでの期間

梅毒が治療によって治るまでの期間は、第何期かによって変わってきます。一般的には、下記の期間で完治するケースが多いようです。

第1期梅毒:2~4週間

第2期梅毒 :4~8週間

第3期梅毒以上:8~12週間

(※完治するまでの期間には個人差があります)

医療の発達した現代では、梅毒で死に至るケースはほとんどなく、発見さえ遅れなければ、比較的簡単に治癒が望めます。重度にならなければ、完治も難しくないため、過度に恐れず正しい知識を持つことが大切です。

感染経路不明「心当たりがない」が最も危険
梅毒は感染していても自覚症状がないというケースが多々見受けられます。実際に、「心当たりがないのに梅毒に感染していた」という人は、驚くほど多いものです。
特に、パートナーが風俗店に勤務していない人や、過去に不特定多数と性行為を行った経験のない人は、「自分は大丈夫だろう…」と油断してしまいがちです。
加えて、初期のうちは一度症状が治まることから、少し違和感を感じても「まあ大丈夫だろう」とたかをくくってしまい、完治しないままパートナーににうっかりうつしてしまいがちなのが、梅毒の怖さです。
例え、性行為を行っていなかったとしても、キスでも感染する可能性はあるため、「自分だけは大丈夫」と思わず、定期的に検査を受けましょう。

梅毒についてよくある質問

ここまで、梅毒の検査や治療方法についてお伝えしてきました。しかし、この記事を読んでいる人のなかには、「梅毒は自然治癒すると聞いたことがあるけど本当なの?」「そもそも梅毒にかからないためには、どのようにしたら良いの?」と疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

そこで、ここからは、梅毒についてよくある2つの質問についてお答えします。

梅毒は自然治癒しますか?

梅毒が自然治癒することは、まずありません。ちょっとの間、症状が和らいだり解消したりすることはありますが、それは、体の外に症状が現れなくなっただけで、完治したわけではありません。

そのため、梅毒の感染が認められた場合には、医療機関で適切な治療を受ける必要があります。自己判断で、梅毒が治癒したと思い、治療を受けないことは大変危険なため、注意してください。

梅毒を予防するためには何をすればいいですか?

梅毒は、性交渉時にコンドームを正しく着用することである程度感染を予防することが可能です。しかしながら、コンドームの着用は、感染リスクを軽減することができるものの、100%完全に予防できるわけではありません。

そのことから、自分やパートナーが梅毒によって感染している可能性がある場合は、アナルセックスやオーラルセックスも含めた性行為を自粛することが重要です。

加えて、梅毒に感染しないためには、不特定多数の人と遊びのような気持ちで性行為をしないこともポイントです。

不特定多数の人との性行為は、自身だけでなく、パートナーへの感染を引き起こす可能性が否めません。「こんなはずじゃなかった…」と、後悔しないためにも、不特定の人と関係を持つのは自重しましょう。

不安になったら、まずは病院で検査を!

今回は、梅毒の具体的な検査方法や治療の内容についてお話しました。梅毒は、感染者との性的接触を通じて感染します。

初期のうちは無症状のことが多いことに加え、そのほかの性病と比較しても感染率がとても高いため、気づかないうちに感染しているかもしれません。

また、性行為の多様化により、症状もさまざまです。梅毒は、自然に治癒する可能性がほとんどなく、長年放置してしまうと最悪の場合、死に至る危険性もあります。

したがって、梅毒の感染を疑ったり、心配になったら早めに検査を受けることが重要です。

宮島 賢也
GOETHEメンズクリニック八重洲院 院長
性感染症は、専門の医師に診察してもらうことが大切です。これからも患者さんから、『ありがとう』『助かったよ』と言ってもらえるような診療を続けていけるよう研鑽してまいります。お気軽にご相談ください。