ウレアプラズマ感染症について|薬で治る?治療法と原因について解説
2022.10.28
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記事監修 宮島 賢也 医師
性器に軽いかゆみや痛みがあり、不安に思って検査をしたら、ウレアプラズマに感染していると言われた。パートナーがほかの検査をしたところ、ウレアプラズマへの感染が見つかった。治療するのはよいが、どんな方法なのか。治療に1カ月くらいかかると言われたが、本当なのか…。 まだあまり一般的ではない「ウレアプラズマ」という病名を聞かされ、自分なりに調べてみると不妊の恐れもあるらしい…。不安でいっぱいになりますね。
確かに放置すれば不妊の危険性がある性病で、これまでの薬が効かない耐性菌が増えているのも事実。でも早めに正しい治療さえすれば、完治する病気でもあります。
はっきりした症状がなくても、「おかしいな」と感じたらすぐに受診しましょう。感染者が多い病気で、感染部位は性器だけとは限りません。 主な症状や感染の経路、検査方法、治療法などを解説していきます。
目次
ウレアプラズマ感染症とは?
ウレアプラズマ感染症は比較的新しい性感染症。日本では2012年から自由診療でのみ検査ができるようになりました。
病原体であるウレアプラズマは、直径100ナノメートルというとても小さな細菌で、現在流行中の新型コロナウイルス感染症の原因ウイルス、SARS-CoV-2と同程度のサイズ。細菌としては最も小さな部類に入ります。
栄養源さえあれば次々に増殖して感染していくため、クラミジアや淋病に次ぐ拡大が予測され、注意が必要です。
ウレアプラズマ感染症の原因
原因菌のウレアプラズマには、ウレアプラズマ・ウレアリチカム、ウレアプラズマ・パルバムの2種類があることが分かっています。
後者のウレアプラズマ・パルバムは発見自体も最近で、2000年代に入ってから報告のあった細菌です。
ウレアプラズマとマイコプラズマ感染症の違い
ウレアプラズマとよく似た症状が現れる性病に、マイコプラズマ感染症があります。
ウレアプラズマ、マイコプラズマ、それぞれの特徴を見ていくと、病原体はともに細菌。
感染すると、男性では尿道や前立腺に症状が現れ、女性では膣炎を起こす点で非常に似通っています。
また治療については、両者とも抗生物質が用いられますが、これまで効果のあったお薬が効きにくくなる薬剤耐性菌が増えている点もよく似ています。
一方で、ウレアプラズマとマイコプラズマでは図1の通り、感染後、発症するまでのメカニズムが異なり、有病率にも違いがあります。
ウレアプラズマは常在菌ですか?病原菌ですか?
常在菌というのは、多くの人が共通して持っており、かつ病原性を示さない菌のこと。
ウレアプラズマは女性では4割近くの人に見られ、症状が出ないことも多いため、常在菌なのか、病原菌なのか、医師の間でも長年、意見が分かれていました。
「常在菌だから、ウレアプラズマは治りにくい」という考え方もあるようですが、最近は研究が進み、「ウレアプラズマは常在菌ではなく、低病原性細菌」という見方が有力になってきました。
主な感染経路について
ウレアプラズマは感染症。感染者の粘膜との直接接触でうつり、性行為や性行為に類する行為が主な感染経路になります。
1回の性的接触する確率はクラミジアや淋菌と同程度で、約30%。誰でも感染する可能性がある性病です。
とくに近年増えているのが、フェラチオのようなオーラルセックスを介して喉に感染するケース。妊娠のリスクがないのでコンドームをせずに行うことが大半かと思われますが、コンドームをしないと粘膜同士が直接接触するため、性器がウレアプラズマに感染していれば喉にうつる可能性があり、逆に感染している喉から性器にうつる可能性もあります。
ウレアプラズマは無症状のことが多いですが、喉は性器よりもさらに症状が現れにくいことから、感染していること自体に気づけないのも難点。
クラミジアや淋菌に次いで感染者が増えていることから、ウレアプラズマに感染しているとは思わずに性行為や性的接触を行っている人が多いことが推測されます。
主な症状について
ウレアプラズマでは、男女とも、この病気特有の分かりやすい症状というのは特にありません。
男性は尿道炎、女性は膣症や子宮頸管炎が多くなりますが、他の病原体が原因の場合とさほど変わらないのです。
これは裏を返せば見過ごされやすいということ。悪化すれば劇症化もあり得るので注意が必要です。
尿道炎は、進行すると急性精巣上体炎といって、副睾丸の炎症の原因になることがあります。陰のうに腫れや痛み、しこりが現れるほか、38度以上の高熱を伴うことも。また、慢性の前立腺炎を引き起こす場合もあります。
おりものの異常としては、いつもよりネバつく、血がまじるなど。膣症が悪化すると、子宮の入り口である子宮頸管や骨盤内の臓器を覆う腹膜が炎症を起こすことがあります。不正出血や性交痛、悪臭のある膿のような黄色いおりものが多くなり、39度以上の発熱を伴うことも。
ただし、女性はこういった症状が出ないことの方が多いのが現状です。
ウレアプラズマとマイコプラズマの症状の違い
男性の場合を例に挙げると、尿道炎や精巣上体炎等、ウレアプラズマ、マイコプラズマとも似通った症状が現れます。
ただ細かく見ていくと、細菌の種類によって各症状との関連性には違いがあります。
図2にもある通り、尿道炎や精巣上体炎、前立腺炎との関連が強いのはマイコプラズマ・ジェニタリウム、一方で、男性不妊と関連が強いのがウレアプラズマ・ウレアリチカムです。
女性の場合は他の雑菌と共存していると不妊症や流産・早産の引き金になりやすいですが、マイコプラズマ・ジェニタリウムでは、単独でそのリスクが高くなります。
さらに、ウレアプラズマについては、妊娠時に感染していると胎児への影響が大きく、慢性肺疾患等の合併症を悪化させることが分かっています。
放置した場合のリスク
性感染症に限らず、自覚症状が軽いとつい放置してしまいたくなりますが、症状が軽いことがすなわち、たいした病気ではないということにはなりません。
ウレアプラズマの場合、放置すると男性は尿道から副睾丸(精巣上体)、精管、精のう、前立腺と、徐々に体内へ感染が拡がっていき、生殖機能にも影響を与えかねません。
例えば、正常な精子の割合や精液の量が減ってしまったり、精子の運動率が悪くなってしまったりすることで、男性不妊の原因にもなり得るのです。
女性の場合は、膣から子宮頸管、子宮、卵管、骨盤内へと感染が拡がっていくわけですが、無症状が大半のことから、感染に気づけずに放置してしまうということが多くなっています。
結果として、不妊や早産・流産のリスクを高めてしまうことも少なくありません。
ウレアプラズマとマイコプラズマの症状及びリスクについて
性の場合、クラミジアでも淋菌でもない尿道炎の原因菌として多いのは、マイコプラズマ・ジェニタリウムとウレアプラズマ・ウレアリチカムで、進行すると精巣上体炎や前立腺炎へと波及していきます。
また、ウレアプラズマ・ウレアリチカムは男性不妊症との関連が指摘されていて、健康な精子の割合が少ない、精子の運動率が低いといった報告もあるほか、女性の場合は他の雑菌と協調することで症状がひどくなり、やはり不妊症の原因になることが分かっています。
潜伏期間について
ウレアプラズマに感染後、症状が現れるのは約3日~5週間後。
ただし、あくまでも目安であって、人によっては潜伏期間を過ごしても症状が出ないこともあります。無症状のケースは、特に女性に多く見られます。
ウレアプラズマの検査方法と検査費用について
検査は病院、または検査キットで行うことができます。
病院を受診する場合、男性は性病科、泌尿器科、女性は婦人科へ。
感染の疑いのある行為から24時間以上経過していれば、検査が可能。正確な結果を得ることができます。
ウレアプラズマの治療について
ウレアプラズマは細菌なので、治療薬の種類としては抗生物質を使うことになりますが、抗生物質は基本的に市販されていません。
病院を受診してはじめて、治療薬を処方してもらうことができます。
ウレアプラズマについてよくある質問
検査で陽性が出たものの、症状は軽いし、何だか治ってきたような気もする。このまま放っておいても自然に治るのでは?再感染したけれど、前回もすぐに治ったし、性行為をしても構わない?等、よくある質問にお答えします。
ウレアプラズマは自然治癒しますか?
自然治癒はしません。
症状がない、あっても軽い、あるいは症状が消えてきた、だから、体内からウレアプラズマが自然にいなくなるのでは、と思うかもしれませんが、症状の有無と菌の有無は必ずしもイコールではありません。
パートナーにうつしたり、先々、不妊症の原因になったりする恐れがあるので、検査で陽性が判明しているなら早めに治療しましょう。
また、たまたま他の病気で服用した抗生物質がウレアプラズマに対して中途半端に効いてしまうと、薬剤耐性菌を生む危険性もあります。
ウレアプラズマの治療中に性行為をしても大丈夫ですか?
治療中ということは、まだ体内にウレアプラズマがいるということになりますから、感染する可能性があります。
ノーマルな性器性交はもちろん、オーラルセックス、アナルセックス、その他性行為に類似する行為も含め、控えるようにしてください。
ウレアプラズマを予防するためには何をすればいいですか?
コンドームの使用が効果的です。
予防には、感染部位と粘膜接触しないことが重要。性器性交だけでなく、オーラルセックスやアナルセックスの場合も着用すること、また接触する部位が変わるごとに新しいコンドームに着け替えることも大切です。
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