ED(勃起不全)の治療といっても、バイアグラが頭に浮かぶくらいで、どんな治療法があるのかを知っている方はあまりいません。

ここでは、ED治療の基本的な知識や、皆様が疑問に思うであろうことを解説していきます。

1.ED治療って 保険適用?

ED治療に保険が効くのか。答えはノーです。
厚労省はED治療について、診察費も処方薬についても保険適用外としています。 バイアグラの製造販売元であるファイザーが保険適応を厚労省に申請しましたが、バイアグラは医薬品であるものの「病気を治療するものではなく、生活改善薬である」とされ、保険適用を認めませんでした。
バイアグラに関わらず、日本でのED治療は、すべて保険適用外の全額自己負担という形になっています。

2.EDの治療法と 費用について

EDの治療法について、費用も含めてみていきましょう。
各治療法の効果に関しては、日本性機能学会/日本泌尿器科学会が編集した『ED診療ガイドライン』を参考としています。

市販薬

グローミン 出典:大東製薬

薬局で買える医薬品には、男性ホルモンを補充する塗り薬があります。
1日に数回、陰のうに男性ホルモン入りのクリームを塗り込むことで、男性ホルモン量を増やします。
製品としては、あかひげ薬局の「トノス」、大東製薬の「グローミン」などがあります。
バイアグラなどのED治療薬は医師の処方が必要なので、薬局・ドラッグストアでは購入できません。

効果
効果に関しては、即効性はありませんが「長期間使用することで、勃起力を改善する基礎体力が付く」というイメージでしょうか。 EDになる頻度が低い人が自信をつけるため、またはバイアグラなどの処方薬でも十分に勃起できない場合の追加の改善策として使うのが適切でしょう。 起こる得る副作用としては、皮膚の発疹、かゆみやはれ、にきびができるなど。男性ホルモン薬は、薬局で買える薬の中で副作用のリスクがもっとも高い第1類の医薬品になります。購入の際は薬剤師の説明をしっかりと聞いておきましょう。
費用
1ヵ月分で4,000~5,000円前後の製品が多いようです。

ED治療薬(処方薬)

ED治療薬(処方薬)

医師の処方が必要なED治療薬。バイアグラ(シルデナフィル)、レビトラ(バルデナフィル)、シアリス(タダラフィル)が国内では承認されています。
3剤ともに国内外で十分な有効性と安全性のデータがあり、ED治療の最初の選択肢になります。
英国では2017年から薬局で買えるようになりましたが、日本ではまだ医師の処方が必要です。
クリニックの受診が恥ずかしい、薬の料金を安く済ませたいという理由で、通販(海外からの個人輸入代行サイトなど)で取り寄せる方も多いのですが、約半数は偽造薬なのでおすすめできません。

効果
バイアグラが発売当時に「夢の薬」「画期的新薬」と呼ばれたように、性行為の1時間くらい前に飲むことで、EDの方にも力強い勃起作用が起こり、正常な性行為ができるようになります。
また、性的な刺激がなければ勃起しないので、服用したからといって勃ちっぱなしにはなりません。
出やすい副作用は、顔のほてりや目の充血、鼻詰まりなど。
死亡例が報道されたことがありましたが、友人からもらった薬を、併用が禁忌とされる薬と一緒に飲んだのが原因で、医師の診察と説明を受けていれば起きない事故でした。偽造品を飲んだことによる死亡者も数名確認されています。
また、誤解している方が多いのですが、ED治療薬には心臓に負担をかける作用はありません。
心臓に負担をかけるのはED治療薬を飲んだ後の行為で、いつもよりもがんばってしまうと結果的に負担をかけることにもなりかねません。
費用
バイアグラ25mgが1錠1,300円前後で処方されています。バイアグラには効果が同じで価格が安いジェネリック薬もあり、こちらは400円ほどで処方されます。 ED治療薬の料金は、クリニックによってかなり幅があります。高いところを選ばないように、クリニックのサイトをいくつか見て回るのがいいでしょう。

陰圧式勃起補助具

陰圧式勃起補助具 出典:ED治療ナビ

ポンプでペニスに血液を吸引した後、ペニスの根本にゴムバンドを巻いて血液を閉じ込める器具です。
20年以上前からあり、ED治療薬で思うような効果が得られない場合に使用されます。
以前は厚労省の認可を受けた器具をインターネットなどで購入することができたのですが、メーカーが生産を終了したので、入手困難になっています。

効果
機械で人為的に勃起状態を再現する方法で、治療薬が効かない人や、服用中の薬との兼ね合いでED治療薬を飲めない人にも効果があります。
勃起のためにポンプを使う作業があり、ゴムバンドを付けたままの性行為になりますので、相手には隠さずに理解を得てもらう必要があります。また、血液が循環しないので、勃起しているペニスは冷たくなります。
費用
3万円ほどで販売されていましたが、在庫を持っているお店はもうないようです。

PGE1注射療法

PGE1注射療法

ペニスに血管を拡げる薬(プロスタグランジンE1)を自己注射するED治療法です。
ED治療薬の効果がない方や、服用中の薬との兼ね合いでED治療薬を飲めない人に行います。
厚労省の認可を受けていない治療法だということもあり、大学病院の泌尿器科などにより実施されています。
実施している医療機関が少ない、薬剤量の調整が必要など手軽に受けられる治療ではありませんが、ED治療薬が効かない場合の選択肢としては最適です。

効果
注射をしてから10分前後で勃起が起こり、30分から1時間ほど持続します。 副作用として、まれに6時間以上勃起が収まらない持続勃起症が起こるという報告があります。持続勃起症は緊急処置が必要となりますので、PGE1注射療法は、緊急処置に対応している医療施設で受けるようにしてください。
費用
自己注射1回分が5,000円前後です。

陰茎プロテーシス移植手術

陰茎プロテーシス移植手術 出典:bostonscientific.com

ペニスにプロテ―シスと呼ばれるシリコンの棒を埋め込む手術です。
ED治療薬、PGE注射療法のどちらにも効果がなかった場合に行われる最後の選択肢になります。
埋め込んだシリコンの棒は自由に曲げ伸ばしできるので、勃起状態にするために伸ばしたり、曲げて下着に格納したり、自分の手でペニスの角度を変えられるようになります。 このプロテ―シス手術も国内では未承認の治療法となり、埋め込むプロテ―シスなどの器具は医師による個人輸入に頼っている状況です。

効果
埋め込んだ棒の角度を勃起状態にすれば、いつでも性交できます。中折れなども物理的になくなるので、いつまでも勃起状態を保つことができます。 ただし、勃起しても細い、温かくならないなど、自然な勃起に比べると満足度は劣るようです。 手術後は2ヵ月ほど性交できません。また、細菌感染などにより再手術が必要になるケースもあります。
費用
50万円~100万円ほどです。

低強度体外衝撃波療法

低強度体外衝撃波療法 出典:direxgroup.com

ペニスに衝撃波を与えて新しい血管を作る働きを助けるという比較的新しい治療法です。
新しい血管ができることで、陰茎海綿体への血流が確保されやすくなり、勃起が可能になります。
こちらも日本では承認されていない治療になりますが、欧州泌尿器科学会のガイドラインではED治療薬を使えない人や効果が出なかった人への第一の選択肢とされています。 衝撃波治療は、もともとは腎臓の結石を破砕するために開発された医療技術ですが、衝撃波を与えた部位に新しい血管が形成されるということがわかり、ED治療へ応用されています。

効果
陰茎海綿体の血管が詰まっていたり細くなっている軽度~中程度のEDに効果があります。
ED1000という機械の場合は3ヵ月前後、レノーヴァは1ヵ月で治療が終わります。効果が十分でない場合は追加で施術します。
費用
30万円~50万円ほど。

3. 各治療法の メリットとデメリット

市販薬(トノス、グローミンなど)

○メリット
薬局で入手できる手軽さ
△デメリット
EDへの作用が緩やかで、効果を実感できない場合がある

ED治療薬(バイアグラ、レビトラ、シアリスなど)

○メリット
7~8割の人に満足なED改善効果が現れる
国内外で十分な有効性と安全性のデータがある国内承認の治療法
△デメリット
常用している薬によっては、ED治療薬を飲むことができない場合がある
顔のほてりや目の充血、鼻詰まりなどの副作用が出やすい

陰圧式勃起補助具

○メリット
ED治療薬を飲むことができない人でも勃起効果を得られる
△デメリット
勃起したペニスが冷たい
ポンプの操作などある程度機械の使い方に習熟が必要
ゴムリングを付けたまま行為するので相手の理解が必要
器具を作っていたメーカーが生産終了したので入手が困難

PGE1注射療法

○メリット
ED治療薬を飲むことができない人でも勃起効果を得られる
△デメリット
国内で承認されていない治療法
実施している医療機関が少ない

陰茎プロテ―シス移植手術

○メリット
ED治療薬、PGE注射でも効果を得られなかった重度のEDでも勃起できる
△デメリット
手術すると自然な勃起は2度とできない
ペニスが細くなる
国内で承認されていない治療法
実施している医療機関が少ない

低強度体外衝撃波療法(ED1000、レノーヴァなど)

○メリット
陰茎海綿体に新しい血管を作るので、根本的な治療になり得る
副作用がないので安全性が高い
△デメリット
血管に作用するので、心因性(ストレスなど)のEDには効果がない
効果が期待できるのは軽度~中程度のED
国内で承認されていない治療法
実施している医療機関が少ない

4.まとめ

ED治療の基準となる『ED診療ガイドライン』によると、ED治療の第一の選択肢は、国内で承認されている「バイアグラ」、「レビトラ」、「シアリス」といったED治療薬を試すこととされています。
常用薬との兼ね合いでED治療薬が飲めない、または効果が現れない場合は陰圧式勃起補助具、PGE1注射療法に進み、最後の選択肢が陰茎プロテ―シス移植手術になります。
しかし、陰圧式勃起補助具は入手が難しく、PGE1注射療法、陰茎プロテ―シス移植手術は国内未承認の治療法ということもあり、熟練した技術があり、リスクへの対応もできる医療機関を選ばなければならないなどハードルが高い状態が続いています。
低強度体外衝撃波療法は新しい治療法であり、根本治療になり得ることと、副作用がないことで注目されています。国内未承認で、まだ医療器具に発展の余地がありますが、10年後、20年後にはED治療薬と並ぶED治療のスタンダードになる可能性を秘めています。