淋病とクラミジアについて|症状に違いはある?どちらも一緒にかかることもある?

2022.10.31

淋病とクラミジアについて|症状に違いはある?どちらも一緒にかかることもある?

記事監修 岡 淳寿 医師

「性器周りがかゆい」「排尿時に痛みがある」このような症状があっても、なかなか人には相談しづらいものです。この記事では、性感染症のなかでも、若い方に罹患者が多い淋病(淋菌感染症)とクラミジアについて詳しく解説します。具体的な症状や治療法、治療期間についても言及していますので、「もしかして性病にかかっているかもしれない」と悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

「最近、性器周りがかゆい」「排尿痛がある」このような症状があっても、場所が場所なだけに、なかなか人には相談しづらいものですよね。男性にとって「性病にかかったかもしれない」と不安を抱えたまま病院に行くのはなかなか難しいものです。

しかし、そのまま放置していても症状が改善することはまずありません。重症化する前に、勇気を出して病院を受診することが大切です。

淋病(淋菌感染症)とクラミジアについて

淋病は、淋菌を起因とし感染者の粘膜から滲出物と接触する性感染症です。女性では子宮頸管炎を発症することがありますが、男性では尿道炎や精巣上体炎などを発症します。

クラミジアは、クラミジア・トラコマチス細菌による性感染症ですが、違いは菌のみで発症部位や症状に大きな差はありません。

淋病、クラミジアともに現れる症状が似ていることから、自分でその違いを見分けることは困難です。いずれにしても泌尿器科や婦人科を受診し、検査を受けてしかるべき治療を行うことが大切です。

淋病とクラミジアの感染数について

性行為で感染する淋病クラミジアは、自覚症状があまりないケースも多く、感染に気付くのが遅くなったり、そのまま放置したことによる重症化には注意が必要です。

実際のところ、近年では特に若い男女にかかる率が増加していて、性行為の若年化・多様化により、10代の感染者も増えている点が問題視されています。ここからは、淋病とクラミジアの具体的な感染数についてみていきましょう。

感染者数について

厚生労働省の性感染症報告によると、クラミジアの感染者数が最も多く、次いで淋病が多いことがわかります。

淋病にかかった男性は、平成14年度が21,921人と最も多く、その後減少傾向でしたが、平成27年度よりほぼ8,000人前後の横ばい傾向で推移しています。淋病は男性に比べて女性は少ないものの、平成15年度の4,527人をピークに、毎年2,000人前後で推移しています。
クラミジアにかかった女性は、平成14年度で25,482人、その後やや減少傾向にあるものの、ここ数年の罹患率は、男女ともほぼ同人数の12,000人〜15,000人前後で推移しています。

「年齢(5歳階級)別にみた性感染症(STD)報告数の年次推移」によると、淋病は男女ともに20〜24歳にピークが見られ、クラミジアについてもピークの年齢が20〜24歳となっていることがわかります。こうしたことから、淋病やクラミジアは、性的活動が活発な若い男女を中心とした病気であると考えられます。

混合感染の多い淋病とクラミジア
実は、淋病とクラミジアは、その半数近くが混合感染(重複感染)するケースが多く見られます。
感染する主な場所は、性器や肛門、直腸、喉、目などです。腟性交では性器に感染し、オーラルセックスでは咽頭、アナルセックスでは肛門や直腸に感染します。
また、感染者の体液がついた手で目を触った場合には、目にも感染する場合もあります。淋病の方が症状を強く感じやすいため、クラミジアが見逃されてしまい、感染が拡大してしまう悪循環になっているのです。そのため、病院できちんと検査をすることが大切です。

淋病とクラミジアの症状

淋病クラミジアに罹患すると、どのような症状が現れてくるのでしょうか。それぞれの症状の違いを男女別に解説していきますが、このふたつの病気は、それぞれの症状が酷似していて判別が難しい点がやっかいであると言えます。

男性の症状

男性が淋病もしくはクラミジア罹患した際の主な症状は、尿道からの膿や排尿時に痛みを伴うことです。どちらも似たような症状であるため、検査をするまではどちらの病気なのか、もしくは併発しているのか不明です。

淋病クラミジア
  • ・尿道からの膿(黄白色で粘り気がある)
  • ・尿道のかゆみ、不快感
  • ・尿道が熱を帯びる
  • ・排尿痛
  • ・副睾丸の腫れ
  • ・発熱
  • ・尿道からの膿(透明、白っぽい)
  • ・排尿時の痛み
  • ・尿道のかゆみ
  • ・精巣上体の腫れ
  • ・発熱

女性の症状

女性が淋病もくしはクラミジアに罹患した場合の主な症状は、おりものの増加や外陰部の腫れやかゆみなどが挙げられます。女性も似たような症状であったり、なかには無症状のケースもあるため、検査をするまではどちらの病気なのか、もしくは併発しているのかはわかりません。

淋病クラミジア
  • ・黃や黄緑のおりもの
  • ・おりものの量が増える
  • ・臭いがきつくなる
  • ・性交時の痛み
  • ・不正出血
  • ・外陰部の腫れやかゆみ
  • ・頻尿
  • ・排尿痛
  • ・膀胱炎のような症状
  • ・おりものの量が増える
  • ・性交時の痛み
  • ・臭いがきつくなる
  • ・不正出血
  • ・下腹痛

性器以外に現れる症状

性器以外に現れる症状としては、咽頭が挙げられます。咽頭淋病では感染後、症状が出るまでの期間が約1週間〜2週間で、無症状もしくは軽度の風邪のような症状が出ます。

咽頭クラミジアの場合も、症状が出るまでの期間はほとんど同じで感染後、約2週間前後です。咽頭淋病同様に、その多くが無症状もしくは軽度の風邪のような症状があります。いずれにしても、どの病原体か確認するためには検査が必要です。咽頭以外には、目や肛門に現れるケースもあります。

咽頭淋病咽頭クラミジア
  • ・のどの痛み
  • ・扁桃腺の腫れ
  • ・咳が出る
  • ・発熱
  • ・痰がからむ
  • ・のどの痛み
  • ・扁桃腺の腫れ
  • ・咳が出る
  • ・発熱
  • ・痰がからむ

潜伏期間の違いについて

【淋病】

男性が淋病による尿道炎にかかった場合の潜伏期間は約1週間で、典型的な症状は尿道痛や排尿痛、尿道口からの膿性分泌物、亀頭部の発赤などです。

女性の症状は男性よりも軽く、腟分泌物が多少増加する程度の場合も少なくありません。

【クラミジア】

男性がクラミジアによる尿道炎にかかった場合の潜伏期間は約1〜2週間で、尿道からさらさらした透明な分泌液が出るほか、軽い排尿痛を伴います。また、精巣上体炎では精巣上体の腫れや疼痛、発熱が現れます。
女性のクラミジア感染症の症状では、不正性器出血、おりもの、膀胱炎のような症状、下腹部痛などが挙げられます。

しかし性別に関わらず、無症候性感染といって症状がほとんど現れない人も半数以上いるため、注意する必要があります。女性の場合は子宮頚管炎から乗降性に感染を引き起こし卵管炎、卵管周囲炎、骨盤腹膜炎などによる不妊症につながるおそれもあります。

淋病とクラミジアに重複してかかっていた場合、淋病が先に発覚し、遅れてクラミジアが発症します。そのため、クラミジアが見逃されやすい要因になってしまうのです。

検査について

淋病の検査クラミジアの検査
男性
  • ・尿検査
  • ・うがい液
  • ・肛門分泌物
  • ・尿検査
  • ・うがい液
  • ・肛門分泌物
女性
  • ・膣分泌物
  • ・うがい液
  • ・肛門分泌物
  • ・尿検査
  • ・膣分泌物
  • ・うがい液
  • ・肛門分泌物
  • ・血液による抗体検査

測定法は主に下記の3つです。
・PCR(PolymeraseChainReaction)法ポリメラーゼ連鎖反応
 細菌の遺伝子の一部分をコピーして増やす遺伝子増幅法。検体を取るのに容易である。
・TMA(TranscriptionMediatedAmplification)法
 PCR法と同じ増幅法のなかのひとつ。
・SDA(StrandDisplacementAmplification)法
 咽頭の淋菌検査などで用いられ、淋菌とクラミジア、同じ検体で検出できる。

淋病とクラミジアを同時に検査したい人には、セットで検査できる病院もあります。また、最近では自宅で検査できる簡易キットも販売されています。

「病院に行くのが恥ずかしい」「勇気が出ない」方は、まずは自分で検査をしてみるのも良いでしょう。ただし、陽性反応が出た場合はすぐに病院を受診してください。

早期受診をすることによって、正確に症状を把握することができますし、最適な治療をすぐにスタート可能です。

治療について

検査結果により、淋病もしくはクラミジアに罹患していることが判明した場合、どのような治療を行い、完治するまでにはどの程度かかるのでしょうか。

具体的な治療法をあらかじめ把握しておくことで、少しでも不安を取り除くことができますよね。治療期間についても言及していますので、参考にしてください。

淋病とクラミジアの治療の違い

似たような症状を引き起こる淋病クラミジアの治療法には、抗菌治療を行いますが、その中身はまったく異なります。例えば、クラミジアの治療薬に用いられるジスロマックは、淋病の治療には適していません。

淋病の治療方法は、筋肉注射や点滴、抗生物質の内服です。かつては、ニューキシロン系抗菌薬が有効でしたが、この薬に対する耐性を持つ頻度が高くなったため、治療に推奨されていません。

治療期間ですが、筋肉注射・点滴の場合は1~2回が目安となり、内服治療の場合は約1週間前後かかります。ただし、完治には個人差があり、治療の回数が異なる場合があります。

クラミジアは、独特の増殖様式を持っているため、抗菌薬は通常14日間の継続的な服用が必要です。途中で症状が軽くなったからといって服用を中止すると、無症状感染が持続するおそれがあるためです。こちらも、完治までには個人差があり、人によっては2〜4週間程度かかる場合もあります。完治したか否かは再検査で確認を行います。

淋病クラミジア
  • ・点滴(セフトリアキソン)
  • ・注射(スペクチノマイシン)
  • ・抗生剤の内服
(アジスロマイシン250㎎)
(オーグメンチン250㎎)など
  • ・抗生剤の内服
  • (マクロライド系)
    (ニューキノロン系)
    (テトラサイクリン系)
  • 内服薬による治療
    淋病とクラミジアに混合感染した場合の治療法ですが、両方に対して別々の治療をしていきます。それぞれの感染症に適切な抗菌薬を投与する必要があるためです。 治療の優先順位としては、症状の強い淋菌の治療を行い、次いで速やかにクラミジアの治療を行うのが一般的です。淋菌は発育が早いため、すぐに大量の抗生物質を使い、短期間のうちに殲滅(せんめつ)させる必要があるためです。一方、クラミジアは淋菌に比べて、比較的発育が遅いためです。 いずれも、完治したかを確認するまで治療を続ける必要があります。無症状になったからといって、自己判断で治療を途中でやめないようにしてください。また、治療中の性行為は控えるようにしましょう。

身に覚えが無いのに感染?パートナー間のピンポン感染に注意

淋病クラミジアも身に覚えが無いのに感染していることがありますが、その場合、パートナーから感染した可能性が高いと考えられます。万が一罹患した場合は、パートナーと一緒に検査をし、早めの治療を開始するのが重要です。症状が軽いからなどの理由からそのまま放置してしまうと、感染が悪化したり、パートナー以外の人にもうつしてしまったりするおそれがあるためです。予防法は、性行為でのコンドームの正しい着用、不特定多数の人と性的接触を避けることです。

不安になったら、まずは病院で検査を!

「もしかして淋病クラミジアに感染してしまったかもしれない」そのような不安がよぎったら、まずは病院で検査をしてもらうのが一番です。淋病もクラミジアどちらもほぼ自然治癒しない病気です。

岡 淳寿
GOETHEメンズクリニック八重洲院 院長
性感染症は、専門の医師に診察してもらうことが大切です。これからも患者さんから、『ありがとう』『助かったよ』と言ってもらえるような診療を続けていけるよう研鑽してまいります。お気軽にご相談ください。